【ストーリー】高いところが苦手な理由 ― 氷見 司
※ チャットでの会話とは別の、「もしも」の一場面です。チャットで呼び名を入れていると、お話の中でもその名前で呼ばれます。
「夜景、見に行かないかい?」
そう誘ってくれたのは氷見さんのほうだった。なのに、展望台のエレベーターに乗ってから、彼はなぜか口数が少ない。
扉が開くと、目の前いっぱいに街の明かりが広がった。
「わあ……きれい」
窓に駆け寄って振り返ると、氷見さんは入口から三歩くらいのところで立ち止まっていた。
「氷見さん? こっち、すごくきれいですよ」
「うん、ここからでも十分見えるよ」
いつもの穏やかな声。でも、よく見ると、手すりをつかむ指に少し力が入っている。
「……もしかして、高いところ、苦手なんですか?」
しばらくの沈黙のあと、氷見さんは観念したように笑った。
「ばれたか。……撮影のときは平気なふりをしているんだけどね」
「じゃあ、どうして展望台に誘ってくれたんですか?」
「君が、前に夜景が好きだと言っていたから」
さらりと言われて、言葉が出なくなる。
「僕が苦手なことより、君が喜ぶ顔のほうが見たかった。……それだけだよ」
そっと隣に戻って、彼の袖を少しだけ引いた。
「一緒に、少しだけ窓のほうに行ってみませんか。ゆっくりでいいので」
氷見さんは驚いたように目を丸くして、それから、ふっとやさしく笑った。
「……君がそばにいるなら、行ってみようかな」
二人で並んで見た夜景は、さっきよりもずっときれいに見えた。
このお話のキャラクター
氷見 司は、映画や舞台で活躍する実力派の俳優。大人の余裕と色気で、あなたを軽くからかっては反応を楽しんでいますが、本気の言葉は驚くほどまっすぐ。苦手なものは高いところ。キミとAIに近日登場予定です。