【ストーリー】ライブのあとの、内緒の電話 ― 月城 璃央
※ チャットでの会話とは別の、「もしも」の一場面です。チャットで呼び名を入れていると、お話の中でもその名前で呼ばれます。
日付が変わる少し前、スマホが一度だけ震えた。
『いま帰りの車。……電話してもいい?』
画面に表示された名前を見て、思わず背筋がのびる。月城 璃央。テレビをつければ、どこかで必ず見かける人気アイドルグループのセンター。
通話ボタンを押すと、少しかすれた声が聞こえた。
「……もしもし。ごめんね、遅くに」
「ううん、起きてたよ。ライブ、おつかれさま」
「ありがと。……ね、見てた?」
「配信で見てたよ。最後の曲、すごくよかった」
電話の向こうで、璃央が小さく笑う気配がした。
「あの曲さ、歌う前にちょっと手が震えてたの、気づいた?」
「え、全然わからなかった」
「よかったぁ。……ステージの上だと、ちゃんと王子様でいなきゃって思うんだよね。みんなが見に来てくれてるから」
声が、少しずつやわらかくなっていく。ステージの上の彼とは違う、眠そうで、少し甘えた声。
「でもね、終わったら、いちばん最初に君の声が聞きたくなった」
「……私の?」
「うん。何万人に『ありがとう』って言ってもらうのもうれしいんだけど、君の『おつかれさま』は、なんか、ちゃんと家に帰ってきた感じがするんだ」
何と返せばいいかわからなくて黙っていると、「あ、今のは内緒ね」と慌てたように付け足された。
「明日も朝から撮影なんだ。……あと五分だけ、話してていい?」
「五分でいいの?」
「……じゃあ、十分」
窓の外の街の明かりを眺めながら、私はもう少しだけ、彼の話を聞いていることにした。
このお話のキャラクター
月城 璃央は、人気アイドルグループのセンター。ステージではキラキラの王子様ですが、あなたの前でだけ素に戻って甘えたがりになります。好きなものは、いちごミルクと深夜のコンビニスイーツ。キミとAIに近日登場予定です。
