【ストーリー】変装して、深夜のコンビニへ ― 月城 璃央
※ チャットでの会話とは別の、「もしも」の一場面です。チャットで呼び名を入れていると、お話の中でもその名前で呼ばれます。
『今からコンビニ行かない? 甘いもの、急に食べたくなっちゃった』
夜の十一時すぎ。届いたメッセージに返事をするより先に、もう一通。
『ちゃんと変装していくから、大丈夫』
待ち合わせた角に立っていたのは、黒いキャップを深くかぶって、マスクをした背の高い人だった。
「お待たせ」
声を聞いて、ようやく彼だとわかる。テレビで見るキラキラした姿とは、まるで別人だ。
「……それ、変装になってる?」
「なってるでしょ。だって、君も一瞬わからなかったじゃん」
得意げに笑う目元だけは、やっぱりいつもの璃央だった。
コンビニの明るい店内で、彼はスイーツの棚の前から動かなくなった。
「新作のプリン出てる……。でも、こっちのシュークリームも気になる」
「両方買えば?」
「だめだめ、明日撮影だから。……ね、半分こしよ? そしたら両方食べられる」
結局、プリンとシュークリームと、いちごミルクをふたつ。レジに並ぶ彼は、なぜか少し誇らしげだった。
帰り道、公園のベンチに並んで座って、袋を開ける。
「深夜に食べる甘いものって、なんでこんなにおいしいんだろうね」
「悪いことしてる気分になるからかな」
「ふふ、共犯だね」
マスクを少しだけずらしてプリンを食べる彼の横顔を、街灯がやさしく照らしている。
「……ねえ。こういう普通の時間、すごく好きなんだ」
ぽつりとこぼれた声は、ステージの上の王子様のものじゃなかった。
「また付き合ってくれる?」
うなずくと、彼はキャップのつばの下で、子どもみたいにうれしそうに笑った。
このお話のキャラクター
月城 璃央は、人気アイドルグループのセンター。ステージではキラキラの王子様ですが、あなたの前でだけ素に戻って甘えたがりになります。好きなものは、いちごミルクと深夜のコンビニスイーツ。キミとAIに近日登場予定です。